書評:ジウ1〜3/誉田哲也

 門倉美咲と伊崎基子、警視庁捜査一課特殊班捜査係に所属する二人の刑事を主人公とした長編の警察小説です。

 静と動、全く異なる特徴を持つ二人は、都内で発生したある人質籠城事件をきっかけに別の部署に異動します。

 所轄の警察署に異動した門倉美咲は、ある未解決の誘拐事件の捜査を担当します。そして、籠城事件と誘拐事件の間の関連性を知り、捜査を進展させていきますが、犯人を追う中で潜入した廃ホテルで、別の誘拐事件を起こした犯人と偶然に遭遇します。

 一方、SATに異動した伊崎基子は、人質の救出と犯人確保のためにその廃ホテルに出動することになります。自らの攻撃力に磨きをかけた基子は5人の犯人をほぼ独力で倒すとともに、人質を助けるために逆に人質となった美咲を結果的に救出することに成功します。

 その後、美咲は2つの誘拐事件の黒幕である「ジウ」を追うために、犯人の取調べを行い、ジウたちの考える「新世界秩序」を知ることになり、一方の基子は独自に「ジウ」のことを追い、新世界秩序サイドの人間に近づくことになります。

 そして、最終的には歌舞伎町を舞台に、新世界秩序がある動きを起こすことになります。

 文庫本全3巻、1100ページ以上にものぼる長編小説ですが、壮大なスケールの物語がスピーディーな展開で進んでいくために、長さを感じさせません。

 また、二人の主人公を中心としたエピソードに加え、タイトルの「ジウ」とその背後にいる『誰でもない人間』である「ミヤジ」の生い立ちに関するエピソードが、ストーリーに重厚感を与えており、結果として非常に読み応えのある一冊に仕上がっている印象を受けました。

 先が気になる小説なので、平日に読み始めるのは必ずしもおススメできませんが、ゴールデンウイークに読み応えのある小説を読みたいような方におススメです。