静かに健やかに遠くまで/城山三郎

 2011年初書評は、年末に読んだ城山三郎箴言集。

 タイトルの「静かに健やかに遠くまで」は、城山三郎さんの人生のコースを変更させるきっかけにもなった箴言、「静かに行く者は 健やかに行く 健やかに行く者は 遠くまで行く」を縮めたもの。

 本書は、城山三郎が小説やエッセイで綴った箴言

  • 生きていゆく日々
  • 会社のエッセンス
  • 男のライフ・スタイル
  • サラリーマンの敗者復活戦
  • 世渡りの秘訣
  • 家庭の姿かたち
  • 老後の風景

 の7つのシーンに分類、纏めた一冊です。

 まず、本書を読んでいて思ったのは、文章に重厚があり、読み手に体力を求めること。

そして、次に思ったのは、その文体に関わらず、言葉に色あせた感がないこと、言い換えれば
文章に普遍性があるということでしょう。

 そのような言葉の中でも、特に好きだったのは以下の3つ。

これは僕の持論になるんですけども、僕が魅力を感じるリーダーというか人間は、常にあるべき姿を求めていることが一つ。それから、生き生きしているということ。それは教養とか文化に対する関心だけじゃなくて、人間に対する関心、好奇心を失わないことですね。三つ目が卑しくないということ。(『失われた志』)

大人が一年間ムキになってやれば、たいていのことは、立派な専門家になれます(『打たれ強く生きる』)

名声は高くても失敗した人の助言や援助は受けるな。著名でなくても成功者の助言や援助を受けよ(『野生のひとびと』)

 いずれの文章も30代で成長していくのに必要な言葉で、心に留めておきたい言葉です。

 ちなみに、巻末に著作リストがあるので、気になった文章がどの本のどのような文脈で綴られたかを辿っていくのも楽しそうな一冊です。(絶版書も多いようですが…)というわけで、早速一冊、『野性のひとびと』をアマゾンのマーケットプレイスで購入してしまいました。

静かに健やかに遠くまで (新潮文庫)

静かに健やかに遠くまで (新潮文庫)