拝金/堀江貴文

ホリエモンの処女小説は自身の経験を交えた経済小説

 田舎の閉塞感に病み都会に出てきたものの目的を見いだせなかった青年「藤田優作」が、謎の「おっさん」の尽力の下、ITベンチャーのトップとして疾走していくという物語。

 本書の見所は、藤田優作がおっさんから借りた元手をケータイゲーム「鳩ゲー」を考え出し、成功するまでの前半部分でしょう。ビジネスマンとして成功してきた著者ならではのビジネスのディテールに読む側は引き込まれていきます。ここは普通の小説家には真似ができないところでしょう。

 他方、自身のエピソードをフィクションを織りまぜた成功後のストーリー展開は、正直勿体無い印象。前半部分のサクセスストーリーに比べディテールが粗いのと、優作やおっさんの主張が過去に著書やブログ、Twitter等で主張しているような議論を小説に置き換えている既視感があり新鮮さに欠けていたということがその理由。このあたりは編集者の腕もあるかと思いますが、さすがに現時点での限界だったのかもしれません。

 とはいえ、前半の疾走感については間違いなくホンモノの文章を感じました。今後は本当のフィクションを読んでみたいと思わされる、そんな一冊でした。

拝金

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