1Q84 BOOK3/村上春樹

 前作のBOOK1・2からおよそ一年、先週末に発売された1Q84 BOOK3を週末の間に読み終えました。

本作は、「天吾」と「青豆」の二人の主人公に加え、組織に頼まれ「青豆」を追う「牛河」の3人のストーリーをカットバックさせていく形式。前作から時間が経っていたけれども、牛河の存在がナビゲーター機能となっていたことがあり、ほとんど戸惑うことが泣く読み進めることができました。このあたりは著者のバランス感覚でしょうか。

で、読み終わっての感想を。まず思ったのは、本作におけるチャレンジはハッピーエンドのラブストーリーを書き上げることだったのだろうかということ。知らず知らずのうちに枠にはめられる社会というのが前作のテーマであったとしたら、その中で変わらないものというのが、本作のテーマのように思われました。(クサい言い方では「All you need is Love」といったところでしょうか)

一方、その試みの反面、ストーリーにおいていくつか腑に落ちない点も個人的に存在しておりました。

  • 天吾の父親と思われる人物が高円寺に出現した理由
  • 牛河がパラレルワールドに移動したきっかけ
  • ふかえりが天吾の家を去った本当の理由
  • 牛河のラストにおいて、リトル・ピープルが登場した理由

等がその代表例。「多分こうだろうな」という推定はできるし、天吾と小松の会話等で、ある程度理解を深めることもできるのですが(例えば、牛河が天吾の父親らしく存在に出くわした瞬間においては、既に彼がパラレルワールドに存在していたのだと気がつくことができます)、必然性と言う点でどうしても弱いんじゃないかと思われる点でした。

もちろん、こういった点も含め自分なりの解釈を楽しみ、共有することがひとつの小説の読み方だということは理解しているつもりですが…。

何はともあれ、ストーリーに留まらずcontroversialであることは間違いない作品です。気になる方はぜひ、ご一読を。

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3