35歳の教科書/藤原和博

30歳になったということもあり、少し先取りしようと思って読んだ一冊。

本書を通して書かれているコンセプトは非常にシンプル。

  • 今後の成熟社会においては『終身雇用』『年功序列』をベースとした組織の下での『正解主義』に基づく社会(=正解を求める社会)ではなく、個人の在り方が重要視される『修正主義』社会(=『納得解』社会)になる。
  • だからこそ、「演じる自分」「公共的リテラシー」「クリティカルシンキング」の3つの能力を身につけ、生き抜く必要がある。

という2文に集約されております。

基本的な発想はよくある啓発本に近いと思われそうですが、公共の存在としての「個人」の在り方と言う点がユニークな所でしょう。

その中でも特に面白かった表現が「ナナメの関係性」。年齢が離れ、利害関係が存在しない立場の人との関係性を表す言葉として藤原さんは用いておりますが、個人の存在を従来型の組織ではなく、コミュニティを通じ形成していくというところは非常に意義があることに思われます。(このあたりの発想は、教育の現場に携われている立場からならではかもしれません。)

一方で気になったのはターゲットの年齢。タイトルでは「35歳」とうたってますが、実際のターゲットはもう少し下の年齢に思われました。一般的に転職の限界といわれ、ある程度人生の方向性が決まってしまっている35歳の方が読むより、今後どうやって生き抜いていくかという所の不確実性が高い(もちろん、選択肢も多いわけですが)20代から30代前半の人間が読む方がタメになる本でしょう。

「生き抜く」というキーワードが気になる人はぜひご一読を。