オー!ファーザー/伊坂幸太郎

 伊坂幸太郎の新刊は新聞連載作品。書かれた時期はゴールデンスランバーよりも前のようですがようやくの刊行となったようです。

 主人公は父親が4人いるという不思議な家庭に暮らす高校生の由紀夫。タイプが全く異なる4人の父親に振り回される日常を送る由紀夫が、父親の一人と出かけたことがきっかけで、とある事件に巻き込まれる事になるというストーリー。

 読み終わっての感想は、非常にライトだということ。一度に読む分量が限られ、また、普段から伊坂作品を読んでいない読者にも楽しんでもらえるよう新聞連載という制約を踏まえて描かれていたのかもしれませんが、非常にシンプルなストーリーです。「あ、これは伏線だろうな」というところはすぐに分かりますし、キャラクターにしても一人ひとりがわかりやすい存在として描かれております。

 また、非常にドラマ化・映画化しやすい印象を受けました。それこそ養生人物を頭の中で実際の俳優に当てはめて読んでいるようなイメージ。
(主人公であれば「林 遣都」もしくは「溝端淳平」、四人の父親のうち3人は「大泉洋(もしくは宮迫博之)」「谷原章介」「椎名桔平」、ヒロインは「成海璃子」かなあ、というように頭の中で想像して読んでいました。)

 一方で、その軽さが物足りないのも事実。とりわけ、複数の伏線が回収されずに終わっているのが残念なところでもあり、過去の伊坂幸太郎作品に比べ、粗いと感じるところです。

 そういう意味では、人に伊坂幸太郎を紹介する入門書としてはいいけれども、ファンとしては紹介した相手に「伊坂幸太郎ってこんなものか」と思われたくないという非常にアンビバレントな作品でしょう。

オー!ファーザー

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