春を嫌いになった理由/誉田哲也

久しぶりに読んだ誉田作品はホラーサスペンス。

冒頭から残虐なシーンで始まった本作は、2人の主人公が存在するカットバック形式で物語は進みます。

メインストーリーの主人公は過去のトラウマから霊能力を一切信じなくなったフリーターの瑞希。テレビ局で霊能力者による捜査番組(明らかに「テレビのチカラ」を元ネタにしています)プロデューサーをしている叔母から霊能力者の通訳を頼まれた彼女は、撮影スタッフと一緒に行った初台の廃ビルで白骨死体を発見しますが、霊能力を信じたくない瑞希は「もしかしたらヤラセではないか?」と思いつつ、テレビの生放送に臨んでいきます。

一方、サブストーリーでは妹と一緒に中国から不法入国した青年が登場し、密入国から歌舞伎町での暮らしといった風景が描かれます。

一見関わりの無い2つのストーリーはテレビの生放送を通じ結合され、クライマックスを迎えることとなります。

そんな本書ですが、まず、心臓が弱い方にはきついでしょう。冒頭からストロベリーナイトのような残虐なシーンがある上に、サブストーリーでは各章ごとに凄惨なシーンが存在しています。読み手を引きつける文章の力は相変わらず見事ですが、「表現が上手いのも善し悪しだよなあ」と思うようなシーンが複数存在しています。

また、途中は非常に疾走感があったのですが、クライマックスの部分についてはかなり強引に話をまとめてしまっているのも残念な点。完全にネタバレになるので言えませんが、「それは反則だろう」という結末でした。(もっとも、ミステリーではなく、ホラーサスペンスならありかもしれませんが。)

とはいえ、誉田作品好きであり、ネタ元である「テレビのチカラ」好きだった身(マクモニーグルにはドキドキさせられたなあ)としては十分に面白く読めた作品でした。


春を嫌いになった理由(わけ) (光文社文庫)

春を嫌いになった理由(わけ) (光文社文庫)