フリーター、家を買う。/有川浩

2010年の本屋大賞ノミネート作品。

 主人公は新卒で入社し会社を3ヶ月で辞めた後、ニート生活を送っていた誠司。いつものように自由気ままなニート生活を送っていたところ、病院に嫁いだ姉からの電話で母親がうつ病にかかっていたことが判明します。そして、病気の抜本的な治療には引越しが必要だということを知ります。

 それから、彼の生活は一変することになります。

  • お金を稼ぐためにアルバイトと母の看護との両立
  • なかなく上手くいかない就職活動
  • 病気を理解しない扱いづらい父親との確執等(さらに言えば、鬱病の原因はこの父親)

様々な苦難がゆるま湯生活に浸かっていた誠司に襲いかかります。

そういった苦難に対し、時には妥協しますが、周囲の協力もありなんとか誠司は対処していきます。
そして、最終的に誠司はひとつの目標を達成することとなります。


本作の特徴は「適度なリアリティ」と「読後感の良さ」につきます。
 
前者の適度なリアリティについては主人公の誠司のセリフや心情の描写が絶妙。また、父親の誠一が履歴書と面接の指導をする場面は、思わず「あるよなあ」とクスリとしてしまいます。

後者の読後感の良さと言う点では、誠司を中心としたキャラクターに「嫌な奴」がいないということと、「主人公の成長」が目標の達成として目に見える形で描かれているところ等が存在します。

他方、ちょっと残念なのは母親の病状や誠司の恋愛等、一部のエピソードが尻切れトンボで終わってしまっていること。ハッピーエンドなんだから最後まで読みたい、と思うのは読み手のわがままでしょうか?

間違いなく、オススメできる一冊です。ぜひ、20代中盤から後半の男性に読んでもらいたい。


フリーター、家を買う。

フリーター、家を買う。