Story Sellers／新潮社ストーリーセラー編集部

　先日のStory Sellers 2に続き、1の方についてのレビューを。

　まず、伊坂幸太郎の「首折り男の周辺」。首を折られる殺人事件の容疑者と思われた大男をめぐるストーリー。数人の登場人物の話が同時進行的にカットバック形式で展開されていきますが、読者のダマシ方が巧妙。

　ストーリーを読むとすぐに男が二人入ることはわかります。まさか、こんなわかりやすい仕掛けだけで物語を終わらせないよなと読み手を警戒させることで、先を読み進めさせます。そして、ラストにもう一段上の仕掛けが展開されます。

　単純であるけれども、読み手を唸らせる技ありの一作でした。

　次に面白かったのはサクリファイスの外伝「プロトンの中の孤独」。これはサクリファイスを読み終えるとより一層面白いです。サクリファイスでエースとして登場していた「石尾」の美学にシビレさせられます。

　その他の作品としては、道尾秀介の「光の箱」が印象的。道尾作品については「向日葵の咲かない夏」を読んだ時の読後感の悪さで印象は悪かったのですが、本作は途中のストーリーの整合性が気になったものの、ものすごく綺麗な終わり方をしており、新しい側面を見ることができました。彼についてはもう少し他の作品にも手を出してみたいと思います。

　全体を通して、もう少しという作品もあるにはありますが（１では本多孝好作品がそこまで好きではなかった等）、やはりアンソロジーとしての完成度の高さは抜群。この春に刊行される３も楽しみにしつつ、登場作家の作品を色々と読み進めたいと思います。

Story Seller (新潮文庫)

Story Seller （新潮文庫） [ 新潮社 ]