日本辺境論/内田樹

 昨年末に読み終えていたけれども、レビューできずにいた本について書いておくことに。

 本書は、日本の地理的な辺境性からその国民性について論じている一冊であり、日本人の国民性をうまく言い得た一冊。

 本書の内容を簡単にまとめてしまえば、「日本の文化や思想というものは歴史的に海外から輸入されたものであり、そもそも語るべき「コア」となるコンテキストをもちえていない」ということ。政治、文化、宗教様々な視点からその論を「辺境人的に」論証しておりますが、それ自身は著者が自ら明言しているように真新しさといったものはありませんが、一方で、現在の世の中や自分自身の行動にに当てはめてみると非常に納得感がある内容です。(「なぜ、出る杭を打つのか?」「なぜ、歴史小説がこれ程までに読まれるのか?」等々)
 
 個別の論理についても非常に興味深かったのは、第4章の「辺境人は日本語とともに」の内容。

 本章では思想的に独自のものを持たない日本人ならではの「日本語」について論じておりますが、表意文字表音文字を併用する日本語の独自性が述べられております。その中でも目から鱗が落ちたのは、「マンガ」という表現手法を進化させたのは、この表意文字(絵)と表音文字(フキダシ)を併用する独自性であるということ。(もっとも、養老先生にインスパイヤされたと著者はいっておりますが)
改めて日本語について考えさせられる内容でした。

 自分を普通だと思っている人も、そうでないと思っている人であろうと、「なぜ自分をそのように分析するに至るのか」を理解できる一冊です。一読をオススメします。

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)