書評:直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた/出口治明

 ライフネット生命代表取締役社長の出口社長による著書。

 現在、ライフネット生命は「正直に経営し、わかりやすく安くて便利な生命保険商品・サービスを提供する」というマニフェストの下、生命保険の付加保険料(事務手数料などの経費)を公開する等、新しい試みを行っていますが、本書は、その試みの原点を知ることができる一冊です。 

 本書の内容は、大きくライフネット生命の立ち上げやビジネスモデル、経営方針に関する記述と出口さんのキャリアに関する記述の2つに分類されますが、とりわけ、後者の出口さんのキャリアに関する部分が面白いです。

 具体的には、第5章の「起業の原点は日本生命での経験」においてそのキャリアについては描かれておりますが、確かに起業家としての原点をそこに見出すことができます。

 日本生命時代に出口さんが手がけた大きなチャレンジとしては 「他業種への参入」と「海外への進出」の2つを実行されました。本人は大きな成果は残せなかったとP169で書いておりますが、その文章からは、社内外を含めた非常に複雑な利害関係の交渉を行い会社に貢献し、その一方で、人的ネットワークを築き上げていったかが感じ取れる内容であり、読んでいて引き込まれる感覚を覚えます。

 また、本書を読んでいて感じるのは、明治時代の志士達の「匂い」です。最近の事業家だと、前ライブドアの平松さんとも近しい印象ですが、ネアカでありつつ、合理性を重要視するその姿勢は、学ぶべきものが多いです。

 元々「ハーバードMBA留学記」を読んで以来ライフネット生命の動向は気にしていたのですが、出口さんについてはノーマークだったことを反省させられつつ、ライフネット生命についてはがんばってほしいので、来年くらいを目処に加入も検討したいと思います。