書評:告白/湊かなえ

 2009年の本屋大賞を受賞した作品です。

 「読後感が悪い」というような評判を聞いていたので、買うか買わないか悩んでいたのですが、とうとう購入したと言ったところ。

 退職を決めた女性の中学教師が終業式の日のHRで、生徒に対し「告白」をするところから物語は始まります。

 「学校内で事故により死亡した自らの娘が、実はクラスの生徒の手によって殺され、自らの手で復讐を行った」、というその告白により、周囲の状況は一変することになります。

 本書の大きな特徴は、その描き方にあります。

 各章ごとに異なる登場人物による独白の形で展開されていくストーリーは、主観の積み重ねで構成されていきます。そのため、各章を読んでいる段階で自分の頭の中に描くストーリーは変化し続けていき、その変化を通じ、読み手を物語の世界に引き込んでいきます。

 テーマが「罪と罰」という重いものであり、また、本書は一貫して「救いがない」内容で構成されているため、読んでいる最中、また、読み終わった後に爽快感といったものは一切存在しておりません。

 ただ、その点を差し引いたとしても、読ませる力が非常に強く、一気に読みすすめざるを得ない作品でした。

 過去の本屋大賞とは全く異なる性質の作品ですが、やはり本屋大賞に外れはない、そう改めて感じさせられました。