書評:向日葵の咲かない夏/道尾秀介

 読んだのは告白より前ですが、あまりの後味の悪さに書評を書きそびれていた作品。

 本作のあらすじは以下の通り。

 夏休みを迎える終業式、欠席した友人にプリントを届けにいった小学校四年生の主人公は、旧友が首をつっているのを発見します。あわて、学校の教師にそのことを伝えますが、教師が警察を連れ彼の家を訪れた際にその死体は忽然となくなっておりました。

 その一週間後、友人は蜘蛛にその姿を変え、彼の元を訪れます。そして、彼は言います。「僕は殺されたんだ。」そして、主人公は妹のミカとともに、彼の死体を捜し、彼を殺した犯人を捜すこととなります。

 と、ここまでは冒険小説の一種か思わされます。(友人が蜘蛛になって帰ってくる時点で「変身」的ではありますが)

 ただ、読みすすめるに従い、妙な違和感を覚えます。主人公の母親の言動であったり、3歳のはずの妹がやけに大人びていたりと読んでいてひっかかる部分があります。

 そのひっかかりは、二転三転するストーリーの中で次第に明らかになりますが、真相が明らかになる気持ちよさに反比例し、登場人物達とその世界のいびつさが露見されていくことになり、後味の悪さにため息をつかされました。

 決してお勧めできる一冊ではないですが、読み応えのある一冊でした。