マリアビートル/伊坂幸太郎

 伊坂幸太郎久々の書下ろしは、殺し屋達の競演、グラスホッパーの続編。

前作から数年が経過した本作の舞台は、東京から盛岡に向かう東北新幹線の車中。多種多様な殺し屋が新幹線という閉鎖空間の中で、それぞれのミッションや意思にそって行動する中で、各自のストーリーが交錯していくというストーリー。

  • コンビの殺し屋 「蜜柑」と「檸檬
  • 不運な殺し屋「てんとう虫」(ダ・ヴィンチ伊坂幸太郎特集にも登場しております)
  • 息子の復讐を果たそうとする元殺し屋「佐野」
  • 佐野に狙われる邪悪な中学生「王子」

 といった一筋縄いかない面々は伊坂幸太郎ならでは。

 また、独特のテンポで繰り広げられる会話と、意外性に満ちた伏線の数々も伊坂ワールドが満点、いつものごとくのめり込まずにはいられません。

ただ、途中のストーリーのアップダウンの面白さに比して、結末があっけない所がやや拍子抜けです。ハッピーエンドでは必ずしもないけれども、一種のカタルシスを覚える伊坂幸太郎作品ならではの感覚を覚えるとまではいきませんでした。前作の「バイバイ、ブラックバード」の印象が強いからかもしれませんが、その点が少々残念でした。

 とは言いつつ、Amazonのレビューの点数は高いようなので、十分に楽しめる作品であることは間違いありません。前作やStory Sellersの短編が好きだった人にはおすすめできると思います。

マリアビートル

マリアビートル