鈴木敏夫のジブリマジック/梶山寿子

 スタジオジブリの名プロデューサーである鈴木敏夫氏の仕事術を周囲の証言を中心にまとめた書籍。
結論から言うと、昨年出版された同氏の「仕事道楽―スタジオジブリの現場」を読んだ上の副読本として楽しむのが適切な一冊で、仕事術やビジネス手法を学ぶための本としては、物足りない一冊です。

 その一番の理由は著者の表現力不足。 

 同氏の「真剣に楽しむ」「率直である」というようなスタンスや、各映画においてヒットさせるために「相手(監督、観客、等)の立場に立ち考える」というような内容は仕事人として勉強になることはあります。(これらは既に仕事道楽でも書かれている内容でもありますが)

 ただ、それ以上に木になったのが、あるエピソードを紹介した後の締めくくり方。「同氏の交渉力はすばらしい」「徳間書店の先代社長の影響がある」というような締めくくり方で終わることがほとんど。ビジネス文庫の著者なのに思考停止状態との印象を受けました。(先般だと、年初に書いた白洲次郎の本と同レベル)

 必ずしも成功しなかったことについて掘り下げてインタビューするなり、分析するなりし、より深いレベルで文章をまとめられなかったのかと読み手の側としてもどかしくなりました。

 超一流の素材を料理人が生かしきれていない、そう思わざるを得ない一冊でした。

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)