書評:続大きな約束/椎名誠

 3月に読んだ「大きな約束」の続編です。

 2007年の後半から2008年の前半にかけての椎名誠さんの日常を描いた私小説。本作では、大量の現行の締め切りに追われつつ、国内を旅した様子が描かれ、またその折々に息子「岳」を中心とした過去の回想がカットインされます。

 基本的には前作同様、あわただしい生活を送っているわけですが、そんな中、ひとつ変化が起きることになります。それは、息子家族の帰国が決まったこと。

 それに伴い、椎名さんの生活も少し変化を見せます。

 人間ドックに行ったり、テレビのドキュメンタリーに出演したりという出来事もそうですが、冒頭で若者と喧嘩をしていた前作に比べ、文章全体からある種の「エネルギー」が感じ取れます。

 そして、そのエネルギーは、あとがきに書かれている以下の言葉に象徴されます。

 「大きな約束」は、いつだって、誰だって、一番大切なことは、生きていくこと 

 本書は、成田空港に一家を迎えに行き、孫と再会したシーンで終わることとなりますが、今後、孫と交えた三世代での物語で、「じいじい」椎名誠はどのような形で約束を果たしていくのか、楽しみにさせられました。