書評:90日変革モデル 企業変革を加速させる3つのフェーズ (Harvard Business School Press)

 Googleエリック・シュミットが絶賛ということで購入した一冊。

 
 ビジネス上の変革を迫られた企業で変革に成功するための要素を「包括性」「迅速性」「統合性」「トップのコミットメント」と分析した上で、それらの要素を織り込んだ変革の道筋(*1)を「90日」という限られた時間の中でいかに立てていけばいいかいうことが本題となっております。

*1
 書籍のタイトルだけだと誤解を招きそうですが、変革の実行そのものを90日で行うというわけではありません。変革のコアとなる準備作業を90日で行うという内容で、また、その段階の前にも、クロスファンクショナルチームの組成といった準備段階も別途存在しております。

  また、90日の準備作業についても30日ずつのスパンで「企業を診断する」「未来を描く」「変革の実行準備をする」というフェーズにわかれており、それぞれの段階において、経営トップ並びにクロスファンクショナルチームが何をすべきかについて、実際の変革の現場における具体例を交えつつ、細かく定義されていきます。

 個別に書かれている内容としては、納得させられることが多いですが、読み終わっての印象は、「この内容をそのまま実行するのは難しい」ということ。理由は、各段階において書かれている注意点が多岐にわたっている上に、優先付けがなされていないためです。本書の内容を忠実に守り変革を行おうとすると、逆にがんじがらめになってしまい、実現性に乏しくなる危険性があります。むしろ、全てを理解しようとせずに、各自の立てる戦略なり事業計画が、上記の要素に外れていないかをいかに意識していくかが問われる所でしょう。

 ただ、このあたりは、日本でも数多く出版sあれているターンアラウンド系の実務書にも書かれているところで、真新しい所はないというのが、正直な所です。(それこそ、過去にとりあげた「戦略プロフェッショナル」等の書籍からも読み取れる内容です。)

 ただ、「営業実績」「市場実績」「生産性」「財務状況」「ROI」の5つの指標を活用した企業分析のモデルは独特で、湯埋めような印象。こちらについては本業でもいかせそうなので、活用してみたいと思います。