書評:ひかりの剣/海堂尊

 チーム・バチスタシリーズのスピンオフ小説でライジングサンに向かう途中の飛行機とバスの中で読み終えました。

 今回の舞台はブラックペアン1988と同時期の、舞台は東城大学と帝華大学の医学部体育会系剣道部。そして、今回の主役は二人、ジェネラル・ルージュの凱旋の主人公だった速水晃一とジーン・ワルツに登場した清川吾郎の2名。

 小説の中身は、タイプが全く異なる2人の主将が医学部体育会系剣道部での最大の名誉「医鷲旗」を手にしようとする青春ストーリー。強豪ではあるけれども頂点には届かない立場にいる剣道部の主将である二人がいかにして強くなり、頂上を目指すかという内容が各章ごとに視点を変えるカットバック形式で書かれております。

 また、他のシリーズ同様、バチスタシリーズの登場人物がフンダンに登場し、過去の作品と重なるシーンがもちろん存在しております。速水の同級生である田口や島津も登場しますが、今回のキーパーソンは高階病院長。

 清川吾郎が所属する帝華大学剣道部の伝説的OBであり、速水が所属する東城大学に赴任するという役柄である高階は、いい加減な天才タイプの吾郎並びに、生真面目すぎる秀才タイプの速水をそれぞれの手法でけしかけることで物語を盛り上げていきます。

 本作は過去の作品のような医療ミステリーではなく(多少医学的な内容は含めれておりますが)、肩のこらない娯楽小説に仕上がっております。人物評価の一定部分を過去の作品に頼ってしまっている所や、二人の主人公が非連続的に強くなるエピソードには「ドラゴンボール的」な部分が多く、苦笑してしまうといった所は存在しております。ただ、過去のバチスタシリーズに登場していないキャラクターも個性豊かだったこともあり、前述のマイナス点を除いても(シリーズの過去作品を読んでいる自分にとって前者はマイナスではありませんが)、十分に楽しめる作品でした。

 もっとも、速いペースでスピンオフがですぎて、食傷気味といえばそれも否定できないのですが・・・。