書評:仕事道楽 スタジオジブリの現場/鈴木敏夫

 スタジオジブリ代表取締役プロデューサーである著者が影響を受けた人物や過去の作品、スタジオジブリの経営などについて語り下ろした一冊ですが、一気に読んでしまう面白い本でした。

 まず、個人的に面白かったのは、徳間書店の社長だった徳間康快や同社の先輩だった尾形英夫とのエピソード。

 豪放磊落な二人の上司とのエピソードのなかに名言があふれています。普通では間に合わない仕事を丸投げしたうえに「まかせた以上は全部任せる」と言い放つ先輩や、「金なんて紙だからな」と名文句を放つ社長とのエピソードは、スタジオジブリという非常に舵取りが難しい会社をなんとか回していく著者の原体験になったのではと思わされます。(もっとも、普通の人では到底対応できないような怪物だったのでしょうが・・・)

 そしてもう一つ面白かったのは、宮崎駿のもつ「リアリティ」について語っている部分。

 ファンタジー色が強い宮崎アニメが継続的に受け入れられる土台はこのリアリティではないのかと直感的に感じた部分なのですが、P59-P64で書かれている細部からの発想「真剣に見た」記憶を通じたオリジナルの創出といった手法がこの肝になっているように考えさせられました。ブレストを通じた発想方法はもちろんですが、この手法は非常に考えさせられるものです。

 その他、本書全編を通じ、過去の作品の裏話(「もののけ姫」のタイトルや「千と千尋〜」の舞台設定等)がちりばめられており、各作品に対する親近感を強めることができ、と同時に、最新作のポニョもみにいかなきゃなと思わされました。

 単純に楽しんで読むことが出来るオススメの一冊です。