書評:医学のたまご/海堂 尊

 チーム・バチスタシリーズの著者が送る医学ミステリー。医学における研究や論文等の体制について疑問符を投げかけている一作です。

 主人公は、普通の中学生の曽根崎薫。自分が実験台となっていた知能テストの結果、「日本一の天才中学生」となってしまった彼は、教授の申し出に従い、地元の国立大学である東城大学の医学部の教授の申し出で研究することになります。

 医学オタクの友人の助けもあり「普通の中学生」であることをごまかしていた彼は、実験のさなか偶然にも論文になるような実験結果を計測します。その実験結果を喜んだ教授は「実績作り」に奔走することとなりますが・・・思いも寄らない方向に自体は動いていきます。

 ストーリーとしては、元々、中高生をターゲットとして書かれているだけあり、ライトノベルのように「軽く」読むことが出来ます。重厚さに欠けるというところはありますが、ターゲットを考えるとこの部分は致し方ないところかもしれません。

 ただ、軽いストーリーの中でも、現在の医学部が抱えている「カネ」や「論文至上主義」の問題点にについても分かりやすく描かれているのは個人的には好印象です。(記号化されすぎているのが危険といえば危険な点ですが。)

 また、本作もチーム・バチスタシリーズと同じ舞台なので、高階病院長や田口公平、如月翔子等のメンバーが登場します。過去作を読んでいる人はおまけでにやりとさせられます。

 中高生が実際に興味を持つのかはわかりませんが、社会人にとっては電車の中で軽く読む本としていいかもしれません。