書評:夢見る黄金地球儀/海堂尊

 チーム・バチスタの著者、海堂尊による医療「外」のテーマを描いた小説。

 テーマは「ふるさと創生事業」で配られた一億円を元に作られたとされる「黄金の地球儀」を盗もうとする主人公とその周辺の人物のドタバタ喜劇。

 家族で鉄工所を営む主人公の平沼平介は、8年ぶりに自分の前に姿を現した悪友から黄金地球儀を盗み出す計画を提案されます。当初は気乗りがしなかった一方、計画を成功に導くための状況が整ったこともあり、積極的に行動するようになり、計画を実行に移します。しかし、いざ、実行におとしたところ、計画外の出来事が起きてしまい…、といった話。

 また、小説の舞台は、チームバチスタシリーズと同じ桜宮市であり、登場人物には、ナイチンゲールの沈黙に出てきたメンバーも出てきます。

 盗難を実行してからの展開はスピーディーでよかったのですが、全部を終えた感想としては、あっさりとしていたというのが正直な所です。ストーリー展開や伏線がわかりやすいのも、あっさりしているという印象を強めている気がします。

 また、チーム・バチスタシリーズの登場人物が出てくるのも、シリーズのファンとしてはよかったのですが、ストーリー上の必然性という点では疑問が残りました。

 というところで、チームバチスタの遠い番外編としてもあまり評価ができない一冊でした。どうも、海堂さんの作品にはムラがある気がします。