書評:事業再生−会社が破綻する前に−/高木 新二郎

 今年の上半期最後の一冊、仕事がらみの本ですが、中々勉強になりました。

 産業再生機構の再生委員長を努めた「企業再建」のプロフェッショナルによる解説書である本書は、事業再生の基礎知識から、事業再生の手法、諸外国並びに日本における関連法規などが網羅されております。

 特に、アメリカのChapter11に代表されるDIP(Debtor in Possession)制度を用いた企業再生について重点的にかかれており、近年、企業再建で主流になっている「民事再生法」や、ガイドラインに基づいた私的整理(*)の手法については、手続きのフローチャートを含め詳細に描かれる等充実した内容となっております。

*私的整理のガイドラインこちら(PDF)

 一方、本書ではあまり個別企業についての再生スキームなどは述べられておりませんが、これらは、預金保険機構保管情報のHPにある支援内容詳細から見ることができ、知識の補完が可能となっており、この内容を見るだけでも勉強になります。(もっとも、具体的な交渉の手法までは書かれておりませんが)

 一般的に必要になるかといわれたら疑問ですが、個人的には非常に興味深い一冊でした。以前紹介したハゲタカのような小説を読む際の事前知識としても面白いと思います。