書評/トップ・プロデューサーの仕事術/梶山寿子

 コンテンツ業界において活躍する9名のトッププロデューサーが仕事のツボについて語っている一冊。

 語っているメンバーは佐藤可士和亀山千広を始めとし、テレビ・映画・広告・キャラクタービジネス・アニメ・マンガと多岐に渡った豪華メンバー。また、各人の話を「コンセプトを練る」「ヒットをマネジメントする」「世界ブランドを育てる」「壁に挑む」という4つのテーマに分類した形で構成されております。

 本書で面白かったのは、マンガの世界展開を手がけるビズ・メディアの福原社長のある行動。それは、「何人の社員に子どもが生まれ、何人が家を持ったか」を毎年記録しているということ。メリルリンチでリストラを担当し、現在も多国籍のメンバーを束ねるTOPの言葉としては異色な印象を受けましたが、トップの責任を端的に表現していると強く感じさせられました。

 一方、残念なのは、もう一歩先のインタビューではないということ。正直、読んだこと、聞いたことのある話が多く、本書だからこその情報が少ないです。意外なプロデューサーであったり、より深いエピソードであったりというのがほとんど見られないです。(個人的には、前述の福原さんだけ新鮮な話で、他の人は「XXで読んだなあ」という感じでした。)著名な方々ばかりなのだから、この点に関しては人選やエピソードの深堀り等、本書ならではの話が欲しかったです。

 そういった点で、各プロデューサーの話を見聞きしたことのない人の方がオススメの一冊です。