書評:エンタテインメント・ビジネス/秋山 弘志・北谷 賢司

 1999年に出版された一冊。現在の株式会社東京ドームにおいて、ドームの開業当時から自主興行を統括してきた著者による興行ビジネス本です。

 今から20年前の1988年に利用が開始された東京ドームは、5万人を収容できる数少ないイベントの会場でしたが、維持費が1日2500万円もかかり、野球だけでは採算が成り立たないもので、収益源としての自主興行を拡大される必要がありました。

 その中で著者の二人はタッグを組み、ローリング・ストーンズの来日公演を皮切りに、音楽を中心に様々な海外のアーティストやスポーツのイベントの招聘を行うことになります。

 本書は、10年間の招聘活動にまつわるエピソード(成功談、失敗談交え)や興行の収支モデル、当時の興行ビジネスの構造等が描かれておりますが、具体的な数字も多く書かれており、非常に面白いです。

 その中でも、第四章第一節の「東京ドーム興行の収支モデル」はアーティストのギャランティの割合や。チケット・エージェンシーへのコミッション、ステージの設営・撤去経費まで詳細に書かれており、非常に面白い資料です。

 現在のコンテンツ市場は、コンテンツ自体はデジタル化の中でビジネスモデルの変化を迫られ、同時にコピーの影響もありビジネス規模が縮小している一方、ライブビジネス(及び付随するマーチャンダイジングビジネス)は拡大基調にあると思っており、重要性が高まっているのを感じています。

 反面、興行のビジネス面はは表に出ない部分もあり、分かりにくい所が相当あります。

 その点において、本書はいかにして興行ビジネスを成立させていったかを伺うこともでき、非常に参考になる一冊でした。