書評:プロ交渉人 ‐世界は「交渉」で動く/諸星裕

 テレビのコメンテーターでも良く見る諸星教授の著書。私自身は知らなかったのですが、実はオリンピックやサッカー等のスポーツの世界などにおけるロビイストやコーディネーターとして30年以上のキャリアを持っていた方らしいです。

 内容としては、大きく3つに分けられます

  • 自身が経験した実際の交渉活動の現場
    (具体的には、第2章におけるサッカーワールドカップ招致活動におけるロビイスト活動や第4章における過去の歴代オリンピックにおけるコーディネーターとしての活動 等)
  • 交渉において必要な能力、ツボ等のノウハウ
    (具体的には第1章における交渉のワザ・ツボ、並びに第3章の語学力、コミュニケーション能力 等)
  • オリンピックを中心としたスポーツの場などにおける一般的な交渉について
    (具体的には第5章の現在の日本のスポーツの場における交渉力等)

 過去の経験を元に書かれているだけに読みやすい上、ワールドカップやオリンピック等、具体例が興味を惹きやすいイベントなので、読みやすいです。

 で、肝心の著者のいう交渉のツボは、というと、基本的には難しいことはかかれておりません。(どのような状況でも、実践が可能かというと話はまったく別です。)そのツボを一文で言うならば

適切なタイミングで適切な相手に対し、(適切な相手を介し)、お互いの背景・目的・プライオリティといった利害をはっきりと考え、交渉する。

 ということにつき、やはり内容としては、依然読んだハーバード流交渉術と近い印象を受けました。一方、違いとしては、継続的な相手との交渉が多いせいか、よりソフトランディングな結末を求めているということがあります。これは本書における「交渉」がより政治的な意味合いが強いからかもしれませんが、私自身の仕事としても継続的な関係が求められることから、参考になる点はあると感じました。

 ページ数も少なく、さらっと読める一冊なので、通勤のお供にもいいでしょう。