1255851902[書評・レビュー]恋文の技術/森見登美彦

 無理ソウルケイジと重い小説を連続して読んでしまったので箸休めとして購入した一冊。

 主人公は能登半島にある研究所に「島流し」にあった怠惰な大学院生。人恋しく、また時間をもてあましていた主人公は、研究室の同期や、先輩、妹や元家庭教師の小学生等、色々な人々に手紙を書くようになります。

 本書は、彼がその友人知人に書いた手紙を再構成するという一風変わった形式で進められていきますが(変わっているという意味では、手紙の相手方に作者自身が含まれているということも言えるかもしれません)、主人公の愛すべきダメ人間ぶりに心が癒されます。

 個人的に特に好きだったのが、主人公の妹に対しての手紙。

 ほかの人の手紙に書かれているエピソードを捏造し、人生の先輩として上から目線で語りかける調子は、読んでいる側が「おい、ちょっと!!」といいたくなるような若気の至りに満ちており、ニヤリとせずにはいられません。

 物語としての重厚さを求めるような書籍ではありませんが、読んでいて楽しい気分にさせられ、また、非常に読後感がいい一冊でした。

恋文の技術

恋文の技術