きつねのはなし/森見登美彦

 先月文庫化された森見さんの小説集。4作の中編小説が収められた連作小説集。とはいいつつも、他の連作小説に比べ各作品ごとの関連性は薄く、各作品ごとに独立している印象を受けます。(つながっているようなつながっていないような・・・このあたりは人によって解釈が分かれるところかと思います。)

 主な題材は、古都に潜むケモノの話。それぞれ異なる大学生の青年達が、古都京都で不思議な体験をし、ケモノを感じるというのが基本的なストーリー展開。単純な怖さではなく、底知れぬ不気味さを味わえる異色のホラー作品です。

 各作品の舞台は、骨董品屋とその常連の屋敷、大学の先輩の部屋、路地裏、歴史のある屋敷とそれぞれ異なっております。一見、どの舞台も普通に存在する場所ですが、それが京都とという独特の雰囲気を持つ街を舞台にすることで、何かがありそうな気にさせられてしまいます。

 他の作品に比べファンタジー性が薄い作品であり、正直読みやすいとはいえず、賛否両論わかれそうな作品ですが、京都の町の「底知れなさ」が非常にうまく描かれており、個人的には興味深くよむことができました。

きつねのはなし (新潮文庫)

きつねのはなし (新潮文庫)