書評:編集者という病い/見城徹
「常識」破りの戦術でヒット作を量産し、地位を築き上げた幻冬舎。本書は、その幻冬舎の社長でありカリスマ編集者でもある見城徹氏が、作家、編集者、出版社の3つの立場から、いかにして作家との関係を構築し、作品を作り上げていったかが書かれている一作。
読み終わっての感じたのは、感情を読み取る感覚の鋭さです。強烈な自意識とコンプレックスから生じている鋭さではないかと思われますが、その鋭さこそが作家と対峙した際に、作家の心の内にあるテーマを突き刺し、表現に向かわせているのではないかと思われます。
中上健次、村上龍、石原慎太郎といった作家や、尾崎豊、坂本龍一等のミュージシャンとの間のエピソードは、どれも非常に濃厚なものです。そして、その濃厚さは見城徹という編集者が、いかに深層心理の深くにもぐり、核心を鋭さで貫こうとしているからに他ならないのかもしれません。
そして、その鋭さは読み手についても覚悟を問いかけているような気がします。仕事への向き合い方、自分への向き合い方等、考えさせられる一冊で、気合を入れなおさせられます。