書評:これがMBOだ!/島田春雄+CVC
この1・2年株式市場が低迷していることもあり、MBOによる非公開化を選択する企業が多くありますが、この流れ(自分の仕事にとってはビジネスチャンス)は当分続くだろうと思い、学習のために購入した一冊です。
本書は物語と解説の2部構成。第一部では前半の物語では、MBOが有効なシチュエーションである
- ノンコア事業・子会社の独立
- オーナー企業の事業承継
- 上場企業の非公開化
の3つのパターンについて、MBOがなされるまでを物語形式で述べ、最後に解説を加えております。
一方後半部分では、経済のグローバル化とMBOの必然性、またパートナーシップとしてのPEファンドの果たす役割といったことが述べられております。
読み終わった印象としては、「正直、誰に向けて書いているのかわからない」という印象です。物語としても、MBOのノウハウ本としても物足りない一冊。
投資家の視点からすると、MBOに際しての具体的なスキームの解説や注意点等の実務的なノウハウが述べられていないのが物足りない点です。実戦としての場数はそこまで多くないですが、(とは言え、会社全体の過去の投資資料を含め、数十件についての投資実例には接しておりますが。)投資の実務に触れている人間にとって知りたいノウハウは正直あまり書かれていませんでした。
また、ストーリーの部分も先般紹介したカーライルの生きた事例に比べると見劣りします。エッセンスを抽出し、誰にでもわかりやすく説明しようとする意図は見えるのですが、投資にあたって期待されるリターンに関する具体的な数字が欠けていたり、交渉現場のシーンがあまりに現実に即していなかったりと、残念な内容というのが率直な印象です。
結論としては、「本書を読むよりカーライルを読むことをオススメします」としか言えない一冊です。