書評:フィッシュストーリー/伊坂幸太郎

 先週読んだ終末のフールに引き続き、伊坂幸太郎作品についての書評を。

 本作、フィッシュストーリーは2007年の1月に刊行された作品集で、2001年に発表された作品から書き下ろしで発表された作品まで、比較的長い期間に書かれた作品が4編まとめられております。

 一番印象的だったのは表題作のフィッシュストーリー。『僕の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない』という印象的な小説のフレーズを元に、過去から未来に連なっていく物語は短編でありながら、伊坂作品に共通する「連鎖」を感じることが出来ます。

 連鎖についていえば、本作も他の作品とのリンクがこまめに描かれております。ラッシュライフ、重力ピエロの二作とのつながりが大きいのですが、過去の作品を読んでいる人間にとってはニヤリとさせられます。

 ただ、反面、各作品のストーリーについては少し物足りなさを感じました。伊坂幸太郎ならではの「必然性」が薄かったというにがその一番の理由ですが、ラッシュライフゴールデンスランバーのような重厚なストーリーと必然性に基づいた伏線が存在している作品と比べると少し物足りなさが残りました。