書評:ハゲタカ2(上)(下)/真山仁

 前回のエントリーに引き続き、小説「ハゲタカ」の書評を。今回は、2004年に発表された続編について。

 第一作が90年代後半から2000年代初頭にかけての失われた10年が舞台だったのに対し、本作は2004年前後からのファンド資本主義時代が舞台となっております。

 前作の最後で三葉銀行の闇をリークした後、主人公の鷲津は、一年余り海外を放浪した後に日本に戻ってきます。そこで知ったのは、片腕だった社長のアランの不審死でした。

 後任の社長が引き起こした無知に伴う混乱を収束させつつ、鷲津は弔い合戦のような形でとしてアランが最後に手がけていた鈴紡の買収を決意します。

 一方、経営再建屋として名をはせた芝野はアルコール依存症に陥った妻の治療に専念し、ビジネスの第一線から退いておりましたが、元上司の飯島の手引きにより、CROとして鈴紡の再建を手伝うこととなります。

 そして、それぞれ異なる立場から、彼らは再建の権利を手中にするために活動を行います。ここまでが上巻。

 一方、下巻では総合電機メーカー曙電機について同様に、海外や国家を巻き込みながら再建のための買収劇を繰り広げていきます。

 正直、曙電機についてはスケールが大きくなりすぎており、金融のスキームを駆使するというより、PR戦略を含めた力技勝負になってしまっているのが残念といえば残念な所でした。

 ただ、本作でも登場人物一人一人が個性を持って描かれている上、手に汗握る逆転に次ぐ逆転のストーリーは十二分に楽しめるものでした。

 ゴールデンウィークのような比較的まとまった時間のある時期に前作とまとめて読まれることをオススメします。