書評:ハゲタカ/真山仁
NHKでドラマ化されたドラマの原作。以前から興味があったのですが、上下巻あわせて900ページ近い作品と長いこともあり、時間があるときに一気に読もうととっておいてましたが、4時間くらいかけ、本当に一気に読んでしまいました。
物語は、最終的な志は近いけれども対照的な二人を中心に進んでいきます。
一人目は、ニューヨークの投資ファンド、ホライズン=キャピタルに勤める鷲津政彦。凄腕の再建屋として鳴らす彼はハゲタカならぬゴールデンイーグルと呼ばれ、部下や投資銀行のFAと共に、次々と債権の取得や企業の買収を仕掛けます。
もう一人は、大手都銀の三葉銀行に勤務する芝野健夫。2度のニューヨーク勤務を経たエリート銀行員の彼は日本におけるターンアラウンドマネージャーの必要性を感じながらも、旧態依然とした会社の中で日々を暮らします。
その二人が、三葉銀行による債権の一括売り(=バルクセール)を通じ、出会います。
その後は、カットバックの形でお互いのビジネスストーリーが流れつつも、キーとなる場面では不思議と交差していくこととなります。
特に、バルクセールを通じた債権やり取りが中心だった上巻に対し、企業買収がメインとなってくる下巻がエキサイティングな内容で、比較的話の内容に近い仕事をしている身にとっても興奮させられます。
その中でも、本作の魅力は2つ。確かな取材に基づくメッセージ性と、登場人物の豊かな個性。
前者に関していえば、「ハゲタカファンド」と「日本版ターンアラウンドマネージャー」という立場の違いはあれど、「旧態依然とした日本の閉塞感を変えていく必要性」や「変革を起こすには信念や志、ストーリーが大切」といったスタンスは両者とも共通しており、また、そのスタンスは小説の世界を超えて共感できるものであるため、読んでいる側を強く引き込ませます。
また、もう1つの魅力は脇を固める登場人物のキャラクターのよさ。特に個人的には、三葉銀行で芝野の上司となる飯島のキャラクターが非常に気になりました。銀行のPB部門からのたたき上げで、煮ても焼いても食えないキャラクターである彼がいることで、物語の奥行きが深まっていると感じました。
ちなみに、本作の続編もすでに上下巻で文庫化されており、勢いにまかせ、そちらも既に読んでしまいました。(おそらく昨日、8時間~10時間はハゲタカの世界に身を投じていたのでは…)感想については、別途。