書評:アメリカを創ったベンチャー・キャピタリスト/ウダヤン・グプタ

 VC関連の様々な方々のブログにて「必読」と書かれていた一冊。新品を入手するのに大分苦労しましたが(実際、Amazonでは定価の1.5倍近い値段から売られております。)なんとか購入に成功し、少しずつ読み終え、先日読み終えました。

 本書はタイトルからもわかるように、アメリカにおいて実績を築いたベンチャーキャピタリストのインタビューが収録されています。その人数は35名で、バックグラウンドも多彩。

 個人的に印象に残ったのは、大きく2つの内容。

 一つ目は、ロックフェラー家やホイットニー家による支援やハーバード・ビジネス・スクールのジョージ=ドリオット教授によって設立されたARD等から始まるアメリカにおけるベンチャーキャピタルの成り立ちといったアメリカのVCの歴史について。特に多くのキャピタリストに影響を残したジョージ=エリオット教授の功績がよくわかります。

 そして、もう一つはアメリカにおけるキャピタリストの投資における一つの特徴。具体的には、ベンチャー企業の運営に「組織」を重要視し、経営メンバーの引抜きを含め積極的に支援を行うという所。

 日本のベンチャーキャピタルアメリカに比べて投資できる金額が小さい、イノベーションに対するリスクマネーが資本市場より供給されにくいというようなことが言われます。確かに金額の多寡が影響を与えることは否定できないと思いますが、実は、アメリカのベンチャー業界の方成功していると思われるのは、「組織」を構成するための人材市場が大きいからではないかとも感じました。

 「優れたアイデアを浮かべることは貴重だけれども、むしろアイデアをビジネスとして実現できる人のほうが貴重」とも言い換えられるのかもしれませんが、少し考えさせられる話です。

 雇用の流動化が進んでいない日本ではまだまだ難しいことかも知れませんが、業界の一員としてどうなっていくか楽しみでたまりませんし、流動化される時代において声をかけられる存在にはなっておきたいと改めて思わされてしまいました。