書評:外資の常識/藤巻健史

 昨年11月に文庫化された元JPモルガン東京支店長にして「伝説のトレーダー」である藤巻健史さんのデビュー作。モルガン時代に金融業界で密かな人気を誇っていたFAX通信「プロパガンダ」の付録が第一章、素人でもわかりやすい金融用語解説が第二章、そして、フジマキ流のマーケットの見方が第三章に収められています。

 正直、タイトルと内容は関係がありません。外資系企業に就職を希望している大学生が就職対策で本書を買ったら、当初はすかしをくらうこと間違いなしの内容です。

 ただ、読みすすめるとユーモアにあふれた文章の数々(秘書であるウスイさんの豪傑エピソードが個人的にはツボ)と、わかりやすい金融の説明に引き込まされます。

 その中でも、やはり経験主義や身近な情報に基づいた洞察、分析が一番面白いです。藤巻兄弟本の「フジマキに聞け」にもありましたが、本書でもP380-P381で書かれている他のアナリストが予想した「地価の底入れ説」を疑ったエピソード(*)等において経験に基づいた洞察が発揮されております。

*他のアナリストが名目賃料を元に発表したのに対し、独自の情報で実質賃料をしっていたので、情報に惑わされずにすんだという話

 金融の勉強を始めようかと思う人にも、肩のこらないエッセイを読みたいという人にもオススメの一冊です。